いつもの電車を、ひとつ手前で降りてみた。理由はとくにない。窓の外に、見たことのない並木が続いていたからだ。

改札を出ると、パン屋の匂いがした。地図も開かず、匂いのするほうへ歩く。こういう朝は、たぶん年に何度もない。

目的地に着くことだけが旅じゃない、と最近よく思う。降りる駅を、ひとつ変えるだけでいい。